願いが叶った夢のような一年間

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少し前の話になりますが、2018年4月からの一年間、私はちょっとだけ本格的に水泳をしていました。

その前に開催された全国障害者スポーツ大会で20代の全盲の女性に負けてから、なんだかとても悔しくて、

専属コーチのような人と来ているその女性を検索すると、全盲のパラリンピックの候補選手でした。

私はこれまで泳ぎ方を習ったことがなかったので、自分がどれぐらい速くなるのかやってみたくなりました。

見えない私(しかも主婦)でもコーチングしてもらう方法はないものかとネット検索してみると、

『泳いでいる動画を送信してリモートで教えてくれる』というのをみつけましたが、見えない私に遠隔で指導されても理解できませんし、結構高額でもありました。

そして、プールは基本撮影など禁止ですので現実的ではありません。

ママ友から友人になったEさんと出かけた先でお会いした方と話す中で、
「見えなくて水泳されているんですねぇ」
「はい、そうなんですよ」
となったらEさんがズイッと出て、

「彼女、障害者の国体にも出ていて、指導してくれるコーチを探しているんです!」と言いました。

私は、心の中で「やめてよEさん、恥ずかしいじゃん」と思っていました。

しかしその方は、意外にも「私も昔、障害者に水泳指導したことはあるけれど、大会に出場するような人には教えられないから、誰かいないか考えてみますね」と言われたのです。

社交辞令と思いきや、翌日連絡があり、知的障害の子供たちも受け入れている水泳クラブの先生を紹介してくださいました。

その先生から、「視覚障害者に指導したことはないが、一度泳ぎを見せてください」と。

後から聞いた話ですが、その時には、コーチはもう引き受けると決めていたそうです。

この男性コーチに1年間個別指導を受けることとなりました。

想像もしていなかった、夢のような展開です。

コーチは週に2回の私の指導をするためにお昼の仕事を断って、私の子育てや家事に負担にならないスケジュールを提案してくれました。

指導することで、もしかしたら私が東京パラリンピックの候補に届くのではないかと思ってくださったのだと思います。

私が40歳の一年間でした。

夫と娘たちは応援してくれて、母も協力してくれました。

4月  指導が始まってすぐに県障害者スポーツ大会
6月九州大会  ここで9月のジャパンパラリンピックに出場するためのタイムに0,07秒足りず
コーチの交渉で急遽
中部ブロックの予選 愛知県へ

年明けのパラリンピックの予選に招待されるよういいタイムを出さなくてはいけません。

試合慣れするようにと一般のスイマーの大会、マスターズにも何度か出場させてもらえました。

12月の障害者全国大会に、コーチと二人で三重県に
一泊二日で行く頃私は疲れすぎてしまい、退会終了後身体が完全に壊れてしまいました。

休んでも休んでも疲れが取れず、2週間程ほとんど動けなくなってしまいました。

これまで疲れた日や心身にストレスがかかった日にだけ飲んでいた薬を、水泳で活動量が増えているということで毎日飲むようになっていましたが、
薬を多めに飲んでもコルチゾールは日常生活に足りない数値でした。

その少し前に腎細胞癌がみつかっていましたが、日常生活や運動には問題ないとのことだったので水泳は続けていたのです。

結局一年間指導していただきましたが、結果を出すことはできませんでした。

選手として続けていける体調ではなくなったのと、腎細胞癌の治療が始まることになったこともあり、水泳はやめました。

一年間私のために時間を作り、力を注いでいただいたコーチにとても申し訳ない気持ちでした。

身体が大事、家庭が大事と言ってくださり、常に私の体調を気にしながらおそらく相当軽めのメニューで指導してくださっていたのですが、私の体力が足りませんでした。

私は網膜剥離のため、体育の授業以上の運動は止められて、中学で陸上部に入るのをあきらめたことがあります。

部活動の経験もない私が、生まれて初めて挑戦したのが40歳での水泳でした。

そんな無謀とも言えるチャレンジに、
高校生の長女は「お母さん、パラリンピックに出てよ」と笑って言ってくれ、
夫は傷んでいく体を毎日のように気圧治療してくれました。

結局、体力も力も足りずあきらめることとなりましたが、チャレンジさせてもらい、
私にとって最高に楽しい 幸せな1年間でした☆

今でもあの一年間を振り返ると、結果は出せなかったけどよくがんばったなぁと泣けてきます。

コーチ、
家族、
プールまでの送迎のガイドヘルパーさんを調整してくれた事業所のみなさん、
泳いでいる間プールサイドで待っていてくださったガイドヘルパーさん、
市民プールで場所を譲ってくださった方々、
その他関わってくださった全ての方に、

心から感謝しています!

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