盲導犬の体験(前編) の続きです。
盲導犬と実際に歩くと、ほしい気持ちが高まり、数日は盲導犬との暮らしを想像してばかりになりました。
しばらくが過ぎ、ガイドヘルパーさんとの外出の日々に戻ると、
やっぱりこちらの方が安心で楽しいなと思えてきます。
どちらにもすばらしい良さがあり、気持ちは揺れ揺れでした。
ガイドヘルパーさんの良い点は
・安全・安心
・会話をしながら歩くことができる
・周りの景色や情報を聞くことができる
・私が知らない場所でも探してもらって行くことができる
・看板やバスの時刻表を見てもらうことができる
・お店で商品を見てもらうことができる
・病院や学校や保育園で目的の部屋に連れて行ってもらうことができる
ガイドヘルパーさんの大変な点は
・一週間以上前に予約した外出しかできない
・一カ月に出かけられる時間が決まっている
・希望した日時に調整ができず断られることがある
・プライバシーを知られてしまうことを気になる人もいるかも
盲導犬の良い点は
・私の出かけたいタイミングで外出ができる
・天候や気分に合わせわたしの都合で自由に予定を変更することができる
・毎日でもウォーキングができる
・かわいい
盲導犬の大変な点は
・毎日のお世話(ブラッシングや基礎的な訓練、トイレなど)
・外出先でのトイレの場所の確保
・私が道順を知っている場所にしか行けない
・長時間のお出かけ、旅行などの間のお世話(お留守番は2~3時間までで、幼い子供と一緒で基本お出かけには連れて行くとのこと)
・外出先で盲導犬同伴や待たせてもらう交渉が必要(私がプールで泳ぐ間、わたしの病院での検査の間など)
子育て中で4週間の訓練を受けるのが難しいということだけでなく、
実際に申し込みを考えると、色々なことが課題に感じられました。
生活が大きく変わることに対して、不安だったのだと思います。
福岡での体験から元の生活に戻ると、
その年は長女の高校受験の年でもあったので盲導犬はまたの機会にした方が良いかなぁ…という気持ちになっていました。
すると、盲導犬協会から、
「せっかくなので、ご自宅周辺の体験もしてみられませんか」との連絡。
一か月後、こちらに来てくださることになり、住み慣れた自宅周辺を歩行体験することになりました。
来てくれるのがまたロダンだと私は更に愛着が湧いてしまうので、
「ロダンにまた会いたい。でも違う犬に来てほしい」と複雑な心境でした。
芽生えたロダンへの愛を、冷静に、「何頭か体験した盲導犬の内の一頭」というものにしたかった。
しかし、来てくれたのはロダンでした。
覚えてくれているのか、興奮の匂い嗅ぎはなし。
訓練士の方と話をする間、我が家のリビングでリラックスして寝てくれていました。
体験歩行はまず私から。
私のコースは、
・自宅から次女が通う保育園まで、
・近所のドラッグストアまで、
・隣のセブンイレブンまで、
どれも徒歩5分以内なのに一人では行けなくて、行けるようになるととても助かる場所です。
続いて夫は、保育園から職場までを体験歩行。
「保育園に次女を送った後、遅刻しそうで急いでいく日もある」と訓練士の方に伝えたらしく、かなり速いペースでの歩行でした。
暑い中、ロダンはがんばってくれました。
職場から自宅までの帰路は『タンデム歩行』で、私がロダンと歩き、主人が私のリュックに掴まって三人で歩きました。
段差で止まってくれた時、指示した通りに動いてくれた時、
「グッド、グッド♪」とほめながら歩きます。
訓練士の方が少し後ろに下がり、ロダンから姿が見えず声も聞こえなくなると、
歩くスピードが落ち、チラチラっと左右に振り返って訓練士さんがいるかを確認するところがとてもかわいかったです。
訓練士の方が見える位置に出てきて
「ロダン、グッド! そのままいいよ」
と言うと安心して、また前だけを見て歩き始めます。
ロダンにとって今はこの訓練士の方が主人で、
4週間の訓練を受けることで私たちが主人であることに意識を変えてもらうんだなと思いました。
ロダンは、初めて体験歩行をしたリッカちゃんの兄弟でした。
さて、「ロダンに我が家に来てほしい」という熱い思いと、
冷静に、「どこへ行くにも犬を連れて出かける覚悟が本当にあるのか?」との問いに対して、またも心は大きく揺れました。
・4週間の泊まり込みの訓練、
・まだ3歳の次女、
・受験生の長女、
・引っ越しの予定、
・水泳で愛媛国体に選考されている…など
その年はやっぱり無理かなという答えになり、盲導犬との生活は取り合えずあきらめることとなりました。
盲導犬について、知っていることと体験するのでは本当に違いました。
我が家にとっては、まだちょっと考えられないという結論になりましたが、
盲導犬との歩行を実際に体験できたことは、とてもかけがえのない、楽しい時間でした。
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