さおり

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中学の同級生のさおりが、亡くなりました。

もう10年以上連絡も取っていなくて
Lineでも繋がっていなくて
別の友達から電話で連絡がありました。

私が視力が落ちてから完全に見えなくなる中3から高1の頃、
毎日のように来てくれて遊んでいた友達です。

あまり自分のことは話さない奴で、
そっけないけど話しやすくて優しくて

目が見えなくなった私に
ついてきてとか一緒に行こうぜとか普通に言ってきたり。

私が乗れなくなったフラミンゴカラーのチャリをさおりに託し、
交通ルール違反ですが私が後ろに立って二人乗りでどこでも行きました。

面倒になったのかさおりは高校を半年でやめて
その頃から遊びに来なくなり、連絡も途絶えてしまいました。

数年後、私は結婚して
地元から10キロほど離れた場所で夫と治療院を始めて、

そんな頃に
私の祖母が立ち寄った地元のミスドでさおりを見つけ、
「連絡してやって」と私の携帯電話の番号を渡してくれました。

それからまた毎日のように連絡を取り合い、
バイトが休みの日は市電とJRを乗り継いで遊びに来てくれて
夫と三人で話したり、近所のお店にごはんを食べに行ったりしました。

私が結婚した2000年頃はEメールの時代で、
まだ音声読み上げの携帯電話がない時代。

さおりのガラケーと、私のデスクトップのパソコンで
メールのやり取りをしていました。

さおりには11歳下の妹がいて、
おばちゃんがヨルお店をしていたので
さおりが母親代わりのようにごはんを作ったりしていました。

全盲で主婦になったばっかりの私と
バイトしながら小学生の妹にごはんを作るさおり。

今日の夕飯は何にするかとか、キッチンの片づけが終わったとか
毎日何通もメールし合っていました。

細かいことはよく覚えていませんが、
多分私が長女を出産したりしたのと、
さおりがバイト先の人と楽しく遊ぶようになったりしたようなタイミングで
なんとなく遊ばなくなったのだと思います。

私は4月生まれなので生まれ順だとずっと一番な感じでしたが、
さおりはめずらしく私より誕生日が早い友達でした。

ちょうど一週間違いで曜日が一緒で、
毎年4月10日になると
「今日はさおりの誕生日だなぁ」と必ず思い出します。

誕生日のメッセージを送り合っていたのも10年以上前が最後だったろうと思います。

でも、相変わらずどこかでさおりは元気にしていて、
いつかまた、普通に笑って会えるものだと思っていました。

さおりは、一年半前に甲状腺のガンが見つかり、
薬がどれも合わなかったのだそうです。

闘病の末2月5日に亡くなって、
妹さんから中学校のグループラインに知らせがあったらしい。

仮通夜に行った同級生に妹さんから
私にも伝えてほしいとお話があったのだそうです。

私は中学のグループラインにも入っておらず、
さおりとはLINEでも繋がっていませんでした。

私の家族もさおりのことはよく知っています。

母に葬儀に連れて行ってもらえるか聞いてみましたが
ちょうど旅行中で都合が合いませんでした。

少し遠いけれどバスで行ける場所だとわかり
ガイドヘルパーさんと行けたらと考えていると、
お通夜に連れて行ってくれるという同級生から連絡がありました。

さおりが亡くなったなんて信じられないまま
「ゆっくり話せるようにお通夜が終わる頃に行こう」と言うT子ちゃんと向かいました。

葬儀場の自動ドアを入ると
「あぁぁぁぁぁ〜」という女の子の叫び声が聞こえました。
何だろう?とそちらを見ると

「まっちゃみるくさ〜〜〜ん!妹です!」と。

「会いたかったぁ。お姉ちゃんも会いたがってたはずだから、絶対に来てほしくて。来てくれてよかったぁ、ありがとうございます!」

小学生の頃しか知らない妹ちゃん。
私の名前や存在を知っていてくれて連絡をくれたことだけでも驚いていたのに、

とても待ってくれていたのを感じ、抱き合って大泣きしてしまいました。

そしておばちゃんのところに連れて行ってくれて
おばちゃんにも抱き着いて更に泣く私。

さおりは棺の中で、私のためにお願いして開けてくださって、触れることができました。
冷たくなって眠っていました。

おばちゃんと妹さんと、一つ上のおにいさんと、
一緒に行ったT子ちゃんと
後から来た中学の同級生の男の子二人と
そしてさおりの旦那さんと
たくさん話ができました。

結婚していたことも知らなかった。
付き合っていると話を聞いたことがあったミスドの人と
一度別れて復縁して、6年程前に結婚していました。

家も建てて、猫ちゃんと三人で暮らしていたらしい。

病気のことは友達誰にも伝えていなかったそうで、
元気になってから「実はガンだったんだ」と笑って言いたかったんだろうということでした。さおりっぽい。

薬で朦朧としている中で
私の名前を口にしたことがあったのらしいです。

気にかけてくれていたのかな。
会いたいと思ってくれていたのかな。

さおりが結婚していたなんて。全然知らなかったよ。
意外だったけど、
旦那さんが聞かせてくれたさおりの話で、
さおりのありのままを受け入れてくれて、夫婦で楽しく暮らしていたことが感じられた。

幸せでよかった。

さおりに、最後に会えてうれしかったけど、
生きている間に会いたかったよ。
すごく会いたい。

目が見えなくなる頃、
普通中学のきらきらした楽しい青春から
一人だけ分断されて置いてけぼりになるような気がしていたのを、

さおりが遊びに来てくれて
笑えるぐらい特別扱いなしで接してくれて、
そのおかげで私は悲しさや淋しさを感じずにいられたと思う。

今の私があるのは、
あの頃の、さおりと過ごした時間があったからだと思う。
心から感謝してるよ。

さおり、ありがとう。本当に、ありがとうね。

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