全盲でコンタクト

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私は中学3年の春から高校入学の頃にかけて目が見えなくなりました。

全盲になってからも眼球には異変がなかったので、
視覚障害者だと気づかれないことが多かったです。

『外見が違和感なく普通』
というのが、私が明るく元気でいられる一つの理由だったと思います。

それが、6年程前から、
「右目が濁って白くなってきている」と、母や娘に言われるようになりました。

右目というのは、手術も何もしたことがない無傷の方だったので、
私としては納得がいきませんでした。

練習して一人でメイクもできるようになり、
アイラインやマスカラもするようになっていましたが、

メイクしたって眼球が白いんじゃあ意味ないよね~
おしゃれしたってしょうがない、どうせ~
というような気持ちになっていきました。

このままじゃいかん!
治るなら手術をしてもらいたい!
と思うようになり、

かかりつけ医の院長先生に相談しました。

「もう長く機能していない眼球を手術などすると、何が起こるか想像ができない
もしかしたら圧が戻らずに眼球が萎んでしまうかもしれない
そうなると眼球の色が違うという状態より目立つことになるかもしれない
僕から見ると、そのままで全然いいと思うよ」
とおっしゃいました。

最後の「そのままで全然いいと思うよ」という言葉がなんだかあたたかく感じ、
私の心は少し軽くなりました。

「後はカラーコンタクトとかでそういう商品があるかもしれないけど、
うちは眼科だからカラコンは扱ってないからねぇ」
とのことでした。

手術はきっぱりあきらめ、カラーコンタクト探しを始めました。

コンタクトなんて誰よりも縁がなかった全盲の私は、手がかりがない中、
ネット検索で『コンタクト』でヒットするメーカーにあちこち問い合わせをしました。

そのような商品が世の中にあるのかないのかもわからないまま、
目が見えないこと、
眼球が濁っていること、
それをかくせるようなコンタクトがないか探していることを伝えました。

どこのメーカーもおしゃれ用の、黒目を大きく見せるものしかなく、
それは縁に色がついているだけでレンズの真ん中は透明とのこと。

何件か電話して、コンタクトメーカーの検索にも限界を感じ、
「そちらになければ、ほかにどんなメーカーがあるか名前だけでも教えていただけませんか」
藁をもすがる思いで尋ねても、

「こちらから他社の名前を出すのはちょっと…」との返事。

当然の対応かもしれませんが、お客様センターのそのようなマニュアルのセリフにも傷つくほど弱っている私がいました。

しかし、その後に電話したメーカーの男性(研究所っぽかった)が、
「うちにはないのですが、SEEDさんにはもう聞かれましたか?
もしかしたらSEEDさんが作られているかもしれません」

手がかりになる名前を教えていただけたことに感激し、
「ありがとうございます!調べてみます!」と言う私に、

「待ってください、今調べますね」と、電話番号まで調べて教えてくださったのです。

親身になってくださり、とても優しい男性でした。

その後、SEEDに電話すると、ありました!
眼球の色の補正をするための、レンズを茶色に塗りつぶしてあるコンタクトが。

病院で処方してもらってからの購入になるそうで、
私が住んでいる県に取引がある病院が2軒あると言われ、

それは、私の掛かり付けの眼科でした…!

眼科のコンタクト部に電話すると、この商品にとても詳しい方がおられ、
改めて受診して処方してもらいました。

きっと珍しいコンタクトのため、
取り扱っているにも拘わらず、担当医も院長先生もご存じなかったようです。

購入時に練習がありましたが、コンタクトは出したり消毒したり、触った感覚では全くわかりませんでした。

初めは一人でできるようになる気がしなかったのですが、慣れってすごいですね。
数日後には感覚が掴めて、今ではコンタクト歴5年程になると思います。

思いついたメーカーを紹介してくれた親切な男性。
名前も聞き損ねてしまい、お礼も言えていないままです。

あの時助けていただいた鶴は、SEEDのコンタクトを着けてすっかり元気に暮らしております。…by 鶴の恩返し

あまり長時間は着けられないので、コンタクトは外出する時だけ装着しています。

私にとっては、メイクの一環のような、お守りのようなものです。

何か目的を達成するまで、我ながらすごいパワーを発揮する時があります。

途中心が折れそうになりましたが、このコンタクトに出会えたおかげで、
今の私は子供たちの学校行事などにも気にならず出かけることができています。

開発してくださった方、教えてくださった方に、心から感謝です。

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