以前のブログ
に書いた通り
一年間だけ本格的にチャレンジした水泳ですが、
実は私は、目が見えていた頃は25mをなんとか泳げるというレベルで、水泳はとても苦手でした。
中学の時の親友が水泳部で、一緒に帰るために部活が終るまでいつも待っていました。
プールの入り口は、当時好きな子がいる野球部を見るのに絶好の場所でした。
親友の専門種目が平泳ぎで、平泳ぎなんてできない私は、
水泳部の美しいフォームを「かっこいいなぁ、あんな風に泳げたら気持ちがいいだろうなぁ」とぼんやり思って眺めていました。
翌年の夏は、網膜剥離を起こし入院していたので泳ぐことはなく、
その後盲学校に転校。
高校1年生で2年ぶりに水泳の授業に参加した私は、
平泳ぎをしてみると、先生方からほめられるほどきれいに泳げるようになっていました。
自分でも訳がわからなかったのですが、
きっと、美しいフォームを見ていたからじゃないかと思います。
見えていた最後の夏に見続けた平泳ぎが、
目が見えなくなってからも瞼の裏に焼き付いて、
ずーっと映像が流れていました。
それが、私の中でイメージトレーニングになっていたのだと思います。
鍼灸マッサージの勉強をしていた盲学校専攻科の21歳の時、地元で国体が開催されました。
一般の国体が終った後に、障害者の国体が実施されます。
その障害者の水泳競技に自由形と平泳ぎで出場しました。
もう20年以上前のこと、一度目の国体出場です…。
初日の平泳ぎは、スタートのタイミングを習っておらず、合図と同時に飛び込みました。
合図が鳴った後に足が離れなければいけなかったらしいのですが、
合図と同時に飛び込むものと勝手にすっかり勘違いしていて、フライングで失格となってしまいました…!
国体といっても、障害別に細かく区分分けされているため、
全盲で私と同じ種目を泳いだ女子は、他には一人だけでした。
ちなみに、全盲の私が水泳で飛び込んでスタートすると言うと、
「見えなくて恐くないんですか?」とよく驚かれます。
自信はないですが、恐くはないです。
予想できる少し先の下にたっぷりの水があるのは間違いないはずなので、思いっきり飛び込むことができます。
一つ不安があるとすると、
飛び込む際、自分が思う真っすぐの方向がずれていると、
潜って浮き上がった時、水中でコースロープを越えていて、隣のコースに出てくる可能性があります。
しかし見えない私は、
コースを越えたことに気づかずゴールまで泳ぎ続けるでしょうね。
ある意味これは恐怖です。
大会では失敗したことはありませんが、
市民プールでの練習の時一度だけやってしまい、25m泳ぎ切ったことがあります。
他のスイマーの方、大変驚かれたと思います。申し訳なかったです。
そのような可能性があるため、大会では視覚障害者が泳ぐ組は
1コースずつ間隔を空けてあります。
私は今でも、体を使う何かをする時、眠る前などに動くイメージを行います。
イメージトレーニングをしておくかどうかで、実際に動いた時に違いがある気がします。
一般的にイメージが大事ということは言われていますが、
私が泳げるようになったのは、イメージトレーニングの効果を身をもって体験したものだと思います。
実はこの、『イメージする』ということが、
本格的に水泳にチャレンジした一年間、最後までうまくできませんでした。
コーチに教えていただいたことが頭ではなんとなく解っても、
自分が泳いでいる場面も、コーチが言われるフォームで誰かが泳いでいる場面も、
イメージして思い浮かべることができませんでした。
それが、タイムが伸びなかった原因かなと、自分では感じています。
お手本を、観て学ぶことができない。
目が見えなくて技術を習得することの難しさ、壁かなと思います。
コメント